身近な人が亡くなったとき、何をすればいいの?相続手続きの流れをフローチャートで解説

身近な人が亡くなった場合、遺族の方々はそのショックや悲しみが癒える間もなく相続手続を行うことになります。

「相続手続といっても、何から手を付けたらよいか分からない」

そんな人も多いのではないでしょうか。

ひとことで「相続手続」といっても、その手続きは多種多様です。

いろいろな窓口で手続を行う必要がありますし、中には期限のあるものもあります。

一般の方がなじみのある手続ばかりではありませんので、「何をしたらよいのか」「何からしたらよいのか」「どこに行ったらよいのか」分からないことだらけだと思います。

今回は、そのような方々に相続手続を少しでも理解していただくために、相続手続の全体の流れをフローチャート形式で解説したいと思います。

相続手続きの全体の流れ

身近な人が亡くなった後に行うべき手続を、フローチャートで表しました。

このフローチャートでは、一つ一つの手続を詳細に説明することよりも、身近な人が亡くなったらどのような順番で何をしたらよいのかが分かりやすくなることを重視しました。

それぞれの相続のケースに応じて、必要のない手続や省くことのできる手続もありますので、このフローチャートにある手続を全て行う必要はありません。

フローチャートを見ながら、相続手続きの大まかな流れをつかんでいただければと思います。

死亡届(7日以内)
身近な人が亡くなったら、まず、死亡を確認した医師から、死亡診断書または死体検案書を交付してもらいます。
死亡診断書または死体検案書の交付を受けたら、亡くなった方の死亡地・本籍地または届出人の所在地の市区町村役場に死亡届を提出します。
死亡届を提出できるのは、親族・同居者・地主・家主・後見人などです。
死亡届は、亡くなった事実を知った日から7日以内に行う必要があります。
火葬許可(7日以内)
通常、死亡届の提出とともに、市区町村役場に火葬許可申請書も提出します。
市区町村役場での処理が終わると、火葬許可証が交付されます。
この火葬許可証を火葬場に提出して、遺体を火葬することになります。
なお、火葬の手続が終了すると、火葬場から埋葬許可証が交付されます。
親族等への連絡
葬儀の準備
葬儀の準備は、一般的に葬儀社と打ち合わせをして決めていくのがほとんどでしょう。
葬儀・告別式のスケジュールが決まったら、親族や関係者へ連絡をすることになります。
なお、故人がエンディングノートなどに自分が希望する葬儀について書き残していた場合は、その望みをかなえてあげた方がよいでしょう。
健康保険(国民健康保険:14日以内、会社員の健康保険:5日以内)
被保険者が亡くなると、被保険者の資格を失うことになるので、資格喪失の手続を行う必要があります。
亡くなった人が国民健康保険または後期高齢者医療制度に加入していた場合は、14日以内に資格喪失届を市区町村役場に提出します。
亡くなった人が会社員で、国民健康保険以外の健康保険に加入していた場合は、5日以内に資格喪失届を年金事務所に提出しますが、ほとんどは会社側で退職手続と一緒に手続きをしてくれるので、会社に確認するとよいでしょう。
世帯主変更(14日以内)
亡くなった人が世帯主であった場合は、世帯主が変わることになります。
世帯主が亡くなり、世帯に15歳以上の人が2人以上残っているような場合は、世帯主変更届を市区町村役場に提出する必要があります。
逆に、世帯主が亡くなった結果、世帯に誰も残らない場合や世帯に1人しか残らない場合、世帯に残るのが配偶者と15歳未満の子供である場合など、次の世帯主が明白な場合は世帯主変更届の提出は不要となります。
年金手続
年金受給者の方が亡くなった場合、年金の受給を停止する手続きを行う必要があります。亡くなった人が受け取るべきだった未支給年金がある場合は、受給資格のある遺族の方が請求すれば、支払われます。どちらの手続も、年金事務所で行うことになります。 
また、亡くなった人が加入していた年金の種類等に応じて、遺族年金や一時金を受け取ることができる場合もあります。こちらも、年金事務所で確認を行った上で、請求できる場合は手続きを行うことになります。

年金手続について詳しい内容を知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
→未支給年金は相続財産?~相続と年金について(1)~
→遺族年金を受け取る条件は?遺族年金の金額はいくら?~相続と年金について(2)~
→「寡婦年金」と「死亡一時金」~相続と年金について(3)~
公共料金等の手続
亡くなった人の預金口座が凍結されると、公共料金等の引き落としができなくなってしまいますので、それぞれの契約の変更手続きを行う必要があります。
主なものとしては、電気・ガス・水道などの公共料金、固定電話や携帯電話、インターネットの契約などが挙げられます。それぞれの窓口に連絡して、契約者の変更手続きや、場合によっては解約手続きを行うことになります。
遺言書の調査
遺言書の検認
亡くなった人が遺言を残していた場合、基本的にその遺言にしたがって相続手続を行うことになります。
そのため、まず遺言があるかどうかを確認する必要があります。
亡くなった人の身近な場所に遺言書が保管されていないか確認してみましょう。
公正証書遺言の場合は、公証役場に原本が保管されています。
最寄りの公証役場で遺言検索を行い、遺言があるかどうかを確認することもできます。
また、自筆証書遺言書保管制度を利用して、法務局に遺言書を保管してもらっている場合も考えられます。
そのような可能性がある場合は、法務局に遺言が預けられていないか確認することも必要でしょう。
遺言が見つかった場合、公正証書遺言や法務局に保管されていた遺言書以外の場合は、遺言の検認の手続をする必要があります。
検認とは、相続人に対して遺言の存在と内容を知らせるとともに、遺言書の形状や状態、日付、署名などの検認日時点での内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。
この検認の手続は、亡くなった人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てて行います。
検認の手続が終了すると、遺言書に検認済の証明書が添付されます。
この証明書が添付されることにより、遺言書に基づいて相続手続きができるようになります。

遺言の検認について詳しい内容を知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
→自筆証書遺言には必要!遺言書の検認について
相続人調査
相続財産調査
相続手続きを行うには、「誰が相続人で」「何が相続財産なのか」を確定する必要があります。
そのため、相続人の調査と相続財産の調査は欠かすことができません。
相続人の調査は、戸籍を取り寄せて確認していきます。
亡くなった人の出生から死亡までの全ての戸籍を取得するとともに、相続人の戸籍も取得し、誰が相続人なのかを確認していきます。
一方で、相続財産の調査は、亡くなった人にどのような財産があるのかを調べていくことになります。
亡くなった人の自宅を中心に調査し、相続財産の資料となりそうなものを探します。
資料になりそうなものとしては、通帳やカード、不動産の権利証、株券、借用書、請求書、金融機関などからの郵送物等があります。
亡くなった人がエンディングノート等に自分の財産の内容をまとめていてくれると、それを見るだけで相続財産を把握できるので、相続財産の調査はかなり楽になります。

誰が相続人になるのかについて詳しい内容を知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
→だれが相続人になるの?どれだけ相続できる?法定相続人・法定相続分の決まり方
相続放棄
限定承認(どちらも3か月以内)
相続財産の確定ができたら、その財産を相続するかどうかを検討することになります。
プラスの財産よりもマイナスの財産が多く相続したくない場合や、相続自体に関わりたくない場合などは「相続放棄」をすることになります。
相続放棄を行うことで、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされます。
相続放棄は、亡くなった人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述する必要があります。
また、亡くなった人の残した財産について、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐという「限定承認」というものもあります。
この限定承認は、共同相続人全員で、亡くなった人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述する必要があります。
なお、相続放棄・限定承認ともに「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内」に行わなければなりません。
何もしないで3か月が経過した場合は、相続したものとみなされます。

相続放棄について詳しい内容を知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
→相続をしたくないときはどうすればいいの?正しい相続放棄について
遺産分割協議
相続人と相続財産の調査が終了し、その内容が確定したら、相続人全員で相続財産の分け方を決めることになります。これを遺産分割協議といいます。
なお、有効な遺言がある場合は、遺言の内容にしたがって相続財産を分割することになるので、遺産分割協議は必要ありません。
遺産分割協議は、相続人全員で行う必要があるので、1人でも欠けるとその協議は無効になります。
なお、前述の相続放棄を行った人は、相続人とはみなされませんので、遺産分割協議には参加しません。
もしも遺産分割協議がまとまらない場合は、裁判所で調停や審判の手続をして相続財産の分割について決めることになります。

遺産分割協議について詳しい内容を知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
→争族にならないためにおさえておきたい!遺産分割協議のポイント
準確定申告(4か月以内)
個人事業主など確定申告をする必要のある人が亡くなった場合、相続人等が亡くなった人に代わって確定申告をする必要があります。これを準確定申告といいます。
準確定申告の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です。

準確定申告について詳しい内容を知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
→亡くなった人の確定申告「準確定申告」とは?
預貯金等の払戻し・解約
不動産等の名義変更
遺言や遺産分割協議によって相続財産の分け方が決まったら、それぞれの財産について相続手続きを行うことになります。
具体的には、預貯金の場合には解約・払戻しや名義変更、不動産の場合には相続登記の手続きを行うことになります。
遺留分侵害額請求
遺留分とは、一定の相続人のために留保することが認められている相続財産の一定割合のことです。
つまり、一定の相続人には、遺言の内容にかかわらず、最低限相続できる権利が認められているということになります。
もしも遺言によって、自分の遺留分を侵害されていることが分かった場合は、遺留分を侵害している者に対して、侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができます。これを「遺留分侵害額請求」といいます。
なお、この遺留分侵害額請求権は、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年又は相続開始の時から10年を経過したときに時効によって消滅します。

遺留分について詳しい内容を知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
→遺言書で相続財産の分け方を決めるときに要注意。遺留分について
相続税申告(10か月以内)
亡くなった人の遺産の額が、相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合は、相続税の申告が必要になります。
相続財産の評価を行ない、相続税の計算をした上で、申告書を作成し、税務署に提出します。
内容が複雑な場合は、自分でやるよりも税理士に依頼して手続を行ってもらった方がよいでしょう。

相続税について詳しい内容を知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
→相続したら税金はいくらかかるの?相続税のしくみと計算方法

おわりに

いかがだったでしょうか。

フローチャートで見ることで、相続手続きの大まかな流れを把握していただけたのではないでしょうか。

一つ一つの手続について詳しく知ることも大切ですが、その前に手続全体の流れを知っておくことの方が、皆さんにとって役に立つと思います。

皆さんの身近でもしものことがあったときに備えて、ぜひ今回のフローチャートを参考にしていただければと思います。