遺族年金を受け取る条件は?遺族年金の金額はいくら?~相続と年金について(2)~

前回の記事でご紹介した未支給年金に続いて、今回も相続にまつわる年金の話です。

第2回は、「遺族年金」について解説します。

この記事のポイント

  • 遺族年金には遺族基礎年金と遺族厚生年金がある。
  • 遺族基礎年金の受給対象者は、子のある配偶者または子である。
  • 遺族基礎年金の額は、基本金額と子の人数に応じた加算額を合計した額である。
  • 遺族厚生年金の受給対象者は、配偶者・子・父母・孫・祖父母のうち優先順位の高い者である。
  • 遺族厚生年金の額は、老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3に相当する額である。
  • 遺族厚生年金には中高齢寡婦加算の制度がある。

遺族年金とは

遺族年金とは、国民年金または厚生年金保険の被保険者であった人が亡くなったとき、その遺族が受けることができる年金のことをいいます。

遺族年金は、亡くなった人の年金の納付状況や受け取る人の年齢などの条件を満たしている場合に受け取ることができます。

そのため、遺族年金を受け取る条件を満たしていない場合は、全く受け取ることができません。

ひとことで遺族年金といっても、遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があります。

「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」には、それぞれについて受給対象者と受給要件が定められており、それらを満たしている場合にそれぞれの年金を受け取ることができます。

そのため、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の両方の受給要件を満たしている場合には、両方の遺族年金を受け取ることができます。

遺族基礎年金を受け取るための条件

まずは、「遺族基礎年金」について確認してみましょう。

遺族基礎年金を受け取ることができるのは、亡くなった人に「生計を維持されていた」以下の遺族です。

遺族基礎年金の受給対象者

  • 子のある配偶者

※なお、「子」とは、18歳になった年度の3月31日までの人・20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある人をいいます。

ここで、「生計を維持されていた」という言葉が出ましたが、これはどのような意味でしょうか。

「生計を維持されていた」とは、亡くなった人と生計を同一にしていて、一定の収入未満(原則年収850万円未満)の人のことをいいます。

このような受給対象者である一定の遺族は、亡くなった人について以下のいずれかの要件を満たしている場合に、遺族基礎年金を受け取ることができます。

遺族基礎年金の受給要件

  • 国民年金の被保険者である間に死亡したとき
  • 国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の人で、日本国内に住所を有していた人が死亡したとき
  • 老齢基礎年金の受給権者であった人が死亡したとき
  • 老齢基礎年金の受給資格を満たした人が死亡したとき

※受給要件の1・2については、死亡日の前日において保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要。ただし、死亡日が令和8年3月末日までの場合は、死亡した人が65歳未満であれば、死亡日の前日において死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよい。

※受給要件の3・4については、保険料納付済期間、保険料免除期間、合算対象期間の合計が25年以上ある人に限る。

遺族基礎年金の年金額

遺族基礎年金の年金額は、以下のとおりです。

遺族基礎年金では、基本の金額に子供の人数に応じた額が加算されます。

遺族基礎年金の年金額

【子のある配偶者が受け取るとき】

780,900円+(子の加算額)

【子が受け取るとき(次の金額を子の数で割った額が、1人あたりの金額となる)】

780,900円+(2人目以降の子の加算額)

※1人目及び2人目の子の加算額 各224,700円

※3人目以降の子の加算額 各74,900円

遺族厚生年金を受け取るための条件

次は、「遺族厚生年金」について確認してみましょう。

遺族厚生年金は、亡くなった人に生計を維持されていた以下の遺族のうち、最も優先順位の高い人が受け取ることができます。

遺族厚生年金の受給対象者と優先順位

  • 子のある妻・子のある55歳以上の夫
  • 子のない妻・子のない55歳以上の夫
  • 55歳以上の父母
  • 55歳以上の祖父母

そして、亡くなった人について以下のいずれかの要件を満たしている場合に、遺族厚生年金を受け取ることができます。

遺族厚生年金の受給要件

  • 厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき
  • 厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やケガが原因で初診日から5年以内に死亡したとき
  • 1級・2級の障害厚生(共済)年金を受け取っている人が死亡したとき
  • 老齢厚生年金の受給権者であった人が死亡したとき
  • 老齢厚生年金の受給資格を満たした人が死亡したとき

※受給要件の1・2については、死亡日の前日において保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要。ただし、死亡日が令和8年3月末日までの場合は、死亡した人が65歳未満であれば、死亡日の前日において死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよい。

※受給要件の4・5については、保険料納付済期間、保険料免除期間、合算対象期間の合計が25年以上ある人に限る。

遺族厚生年金の年金額

遺族厚生年金の年金額は、以下のとおりです。

遺族厚生年金では、亡くなった人の収入に応じて計算します。

遺族厚生年金の年金額

老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3=(A+B)×3/4

A:平均標準報酬月額×7.125/1000×平成15年3月までの加入期間の月数

B:平均標準報酬額×5.481/1000×平成15年4月以降の加入期間の月数

※平均標準報酬月額…平成15年3月以前の標準報酬月額の総額を平成15年3月以前の加入期間で割った額

※平均標準報酬額…平成15年4月以降の標準報酬月額と標準賞与額の総額を平成15年4月以降の加入期間で割った額

※受給要件の1・2・3による遺族厚生年金で、厚生年金の被保険者期間が300月未満の場合は、300月とみなして計算する。

なお、65歳以上で老齢厚生年金を受け取る権利のある人が、配偶者の死亡による遺族厚生年金を受け取るときは、「死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額」と「死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の額の2分の1の額と自分の老齢厚生年金の額の2分の1の額を合算した額」を比較し、高い方の額が遺族厚生年金の額となります。

中高齢寡婦加算

遺族厚生年金には、夫を亡くした妻に対して、遺族基礎年金を受け取る要件を満たしていない場合に年金額を加算する制度があります。

これを、「中高齢寡婦加算」といいます。

以下のいずれかの要件にあてはまる妻は、40歳から65歳になるまでの間、年額585,700円が加算されます。

中高齢寡婦加算の要件

  • 夫が亡くなったとき、40歳以上65歳未満で、生計を同じくしている子がいない妻
  • 遺族厚生年金と遺族基礎年金を受けていた子のある妻が、子が18歳到達年度の末日に達した等の事由のため、遺族基礎年金を受給できなくなったとき

まとめ

今回は、遺族年金について解説しました。

遺族基礎年金と遺族厚生年金のそれぞれに異なる受給要件があり、受け取る年金額もそれぞれの状況により変わります。

受給要件や年金額の計算式を覚えるというよりは、遺族年金の大体のイメージをつかんでいただければよいのではないでしょうか。

一番大事なのは、日ごろからご自身やご家族の年金の状況について把握しておくことです。

年金事務所から届くねんきん定期便やねんきんネットなどを利用して、定期的に年金の状況を確認しておくとよいでしょう。

なお、本文中の年金額等の数字や計算式などは、本記事作成時点のものです。

法律や制度の改正等によってたびたび変化しますので、その都度ご自身でチェックしていただきますようお願いします。