「寡婦年金」と「死亡一時金」~相続と年金について(3)~

前回は遺族年金について解説しましたが、遺族年金を受け取る要件を満たしていない遺族には何のケアもないのでしょうか。

たとえば、亡くなった人が第1号被保険者(国民年金加入者)で、かつ子供がいないような場合には、遺族厚生年金も遺族基礎年金も受給することができません。

このように遺族年金を受給することができない遺族でも、一定の要件を満たしている場合に給付される年金の制度があります。

それが「寡婦年金」と「死亡一時金」です。

今回は、これらの制度について解説します。

この記事のポイント

  • 「寡婦年金」は、国民年金第1号被保険者の保険料納付済期間と保険料免除期間が合わせて10年以上ある夫が亡くなったときに、夫によって生計を維持されかつ夫との婚姻関係が10年以上継続している妻が60歳から65歳になるまで受け取ることができる。
  • 「死亡一時金」は、死亡日の前日において国民年金第1号被保険者の保険料納付済期間が36月以上ある人が死亡したときに一定の遺族が受け取ることができる。

寡婦年金

「寡婦年金」とは、一定の要件を満たした場合に、夫を亡くした妻に対して支給されるものです。

寡婦年金の受給要件は、以下のとおりです。

寡婦年金の要件

  • 亡くなった夫について、国民年金第1号被保険者の保険料納付期間と保険料免除期間が合計10年以上ある。
  • 夫によって生計を維持され、かつ夫との婚姻関係(事実婚を含む)が10年以上継続していた。

上記の要件を満たしている場合、受給対象者である妻は、60歳から65歳になるまでの間、寡婦年金を受け取ることができます。

ただし、夫が老齢基礎年金や障害基礎年金を受け取ったことがある場合や、妻自身が繰上げ受給の老齢基礎年金を受け取っている場合は寡婦年金を請求できません。

寡婦年金によって受け取ることのできる年金額は、以下のとおりです。

寡婦年金の金額

  • 夫の死亡日前日までの第1号被保険者期間から、老齢基礎年金の計算方法により算出した額の4分の3に相当する額

なお、寡婦年金を受給することのできる妻が遺族厚生年金などの他の年金についても受給資格がある場合は、一人一年金の原則により、いずれか一つの年金を選択することになります。

死亡一時金

「死亡一時金」は、亡くなった人が国民年金保険料を一定期間納めていた場合に、遺族が受け取ることのできる給付金です。

死亡一時金の受給要件は、以下のとおりです。

死亡一時金の受給要件

  • 死亡日の前日において、国民年金第1号被保険者(任意加入被保険者を含む)の保険料納付済期間が36月以上ある人が死亡したとき。

※ただし、亡くなった人が老齢基礎年金・障害基礎年金のいずれかを受け取っていたときや遺族基礎年金を受け取ることができる人がいる場合は除く。

死亡一時金を受け取ることができるのは、亡くなった人と生計を同一にしていた以下の遺族のうち、最も優先順位の高い人になります。

死亡一時金の受給権者と順位

  • 配偶者
  • 父母
  • 祖父母
  • 兄弟姉妹

死亡一時金の金額は、以下のとおりです。

亡くなった人の保険料納付月数に応じて、最大32万円が給付されます。

死亡一時金の額

  • 36月以上180月未満:120,000円
  • 180月以上240月未満:145,000円
  • 240月以上300月未満:170,000円
  • 300月以上360月未満:220,000円
  • 360月以上420月未満:270,000円
  • 420月以上:320,000円

※死亡した月の前月までに付加保険料納付済期間が36月以上ある場合は、上記の金額に8,500円が加算される。

なお、死亡一時金は、死亡日の翌日から2年を経過した場合は請求することができなくなります。

まとめ

いかがだったでしょうか。

今回まで3回にわたって相続にまつわる年金について解説してきました。

相続が発生すると、葬儀や遺品整理、相続財産の分割などやることや考えることがいっぱいあって年金のことまでは頭が回らないことが多いです。

事前に年金に関する知識を持っておいて、いざというときに請求できるものはきちんと請求できるようにしておくとよいでしょう。