遺言書の内容をスムーズに実現できる「遺言執行者」について
皆さんは、「遺言執行者」という言葉は聞いたことがあるでしょうか。
聞いたことがない方でも、「遺言執行者」というくらいですから、「遺言」に関係があることは想像できますね。
「遺言を作成するときには、遺言執行者を決めておいた方がよい」とよく言われます。
遺言執行者とは、何をする人なのか?
遺言執行者は、なぜ必要なのか?
今回の記事では、この点について解説したいと思います。
この記事のポイント
- 遺言執行者とは、遺言書の内容を実現するための一切の行為をすることができる。
- 遺言執行者は遺言書の執行に関する手続を一人でできるので、遺言の内容をスムーズに実現することができる。
- 遺言執行者は、未成年者や破産者でなければ誰でもなることができる。
- 遺言執行者の選任の方法は、遺言書で指定する方法・遺言書で第三者に指定を委託する方法・家庭裁判所に選任してもらう方法の3つがある。
遺言執行者とは
遺言執行者とは、遺言書に書かれた内容を実現するための一切の行為をする権利・義務を有する者のことをいいます。
遺言書の内容は、誰かが手続をしなければ実現することはありません。
遺言書の内容を実現するための手続は、通常相続人が行うことができますが、その場合、相続人全員で手続きを行う必要があります。
たとえば、相続人が離れた地にいる場合や行方不明の相続人がいる場合などは、一つの手続をするのにも非常に面倒になります。
一方で、遺言執行者を定めておけば、遺言執行者が一人で遺言書の内容を実現するための手続を全て行うことができます。
このように、遺言執行者を決めておくことによって、遺言書の内容をスムーズに実現できるようになるわけです。
遺言執行者は、未成年者や破産者でなければ、誰でもなることができます。
そのため、相続人や受遺者も遺言執行者になることができます。
その一方で、相続財産の管理や分配について、より確実性や専門性が求められるような場合は、弁護士などの専門家がなることも多いです。
遺言執行者は何ができるのか
さて、遺言執行者が、遺言書の内容を実現するための手続を行うことができるのは分かりましたが、具体的に何をすることができるのでしょうか。
遺言書の内容を実現することを「遺言の執行」といいますが、遺言の執行には、以下のようなものがあります。
・不動産の名義変更(所有権移転登記手続)
・預貯金の払戻し、解約、名義変更
・株式の名義変更
・貸金庫の開扉、解約、内容物の取り出し
・子供の認知、相続人の廃除
つまり、遺言書に記載されているとおりに相続財産を相続人や受贈者へ分配・帰属させるための一切の手続ができることになります。
その一方で、遺言執行者は、遺言書の内容を相続人へ通知する義務や、財産目録を作成し相続人へ交付する義務があります。
遺言執行者の選任方法・報酬
遺言執行者を決める方法としては、以下の3つの方法があります。
・遺言書で遺言執行者を指定する。
・遺言書で、遺言執行者の指名を第三者に委託しておく。
・相続人などの利害関係者が家庭裁判所に遺言執行者の選任を請求する。
ほとんどの場合は、遺言書で遺言執行者を指定する方法といえるでしょう。
また、弁護士などの専門家が遺言執行者になる場合は、遺言執行者の報酬が発生することになります。
遺言執行者の報酬は、明確な基準があるわけではありませんが、一般的に「遺産総額の1~3%」の金額が相場のようです。
遺言執行者は決めておいた方がよい?
遺言書の内容を実現するための手続は、相続人でもできるので、必ず遺言執行者を選任しないといけないというわけではありません。
ただ、先に述べたとおり、相続人が手続をする場合は、相続人全員の協力が必要になるので、相続人がたくさんいる場合は、何をするにも時間がかかりますし、一人でも欠けると手続が頓挫してしまいます。
「遺言の内容の実現に時間がかかるかもしれない」「遺言の内容を実現できないかもしれない」といったリスクを防ぐのが、まさしく「遺言執行者」なのです。
せっかく遺言書を作成しても、実現しなければ意味がありません。
より確実に遺言書の内容を実現できるようにするために、遺言執行者は遺言書の中できちんと指定しておいた方がよいでしょう。