自分がもしそうなったとき、あなたはどう考える?「尊厳死」と「尊厳死宣言」について

皆さんは、自分が末期状態の病気になってしまった場合や植物状態になってしまった場合のことを考えたことはありますか?

おそらくほとんどの人はそのようなことを考えたことはないでしょうし、考えたくないでしょう。

ただ、もしも自分がそのような状態になった場合、生きるためだけに延命措置をされることを望むでしょうか。

人工呼吸器などによってただ単に生かされ続けるということを望まない人もいるのではないでしょうか。

人間が人間として尊厳を保ったまま死を迎えることを「尊厳死」といいます。

そして、この尊厳死を事前に希望しておくことを「尊厳死宣言」といいます。

自分らしい最期を迎えるための終活を考えるにあたって、この「尊厳死」や「尊厳死宣言」も重要なポイントになってきます。

今回は、このような「尊厳死」・「尊厳死宣言」について解説していきます。

この記事のポイント

  • 尊厳死とは、延命措置を施さずに人間としての尊厳を保ったまま自然な死を迎えることをいう。
  • 本人が健全なうちに、尊厳死を希望する旨を表明することを尊厳死宣言という。
  • 尊厳死宣言の方法としては、個人的に尊厳死宣言書を作成する方法や、公証人に依頼して尊厳死宣言公正証書を作成する方法がある。
  • 尊厳死宣言書には、「延命措置を拒否して尊厳死を希望する旨」「尊厳死を受け入れた医療関係者に責任はないこと」などを記載する。

尊厳死とは

尊厳死は、医学的には、一般に回復の見込みのない末期状態の患者に対し、生命維持治療を差し控えたり、既に行っている生命維持治療を中止することにより、人間としての尊厳を保ちつつ死を迎えさせることを言います。

社会的に問題となっている「安楽死」と混同されやすいですが、似て非なるものです。

安楽死は、本人の希望に基づいたうえで積極的な医療行為によって患者の死期を早めることで、日本では犯罪とされるものです。

これに対して尊厳死は、延命治療を施さずに自然な最期を迎えることであり、苦痛を和らげるような緩和ケアなどは行ったうえで自然な死を迎えることになり、両者には大きな違いがあります。

では、尊厳死は、現在の法律では認められているのでしょうか。

結論から言うと、現在の日本の法律では、尊厳死について様々な議論があり、明確に認められてはいません。

その一方で、アメリカやヨーロッパの各国など尊厳死を認める法律や規定を持つ国が増えており、世界的には尊厳死を認めていく方向性になっているようです。

尊厳死宣言

自分の意識が正常なときに、自ら尊厳死を選択して表明することを「尊厳死宣言」といいます。

尊厳死宣言の方法としては、「尊厳死宣言書」「リビング・ウィル」などといった書面を作成して、尊厳死を希望する意思を表明するのが一般的です。

また、より確実に自分の意思を残しておきたいという場合には、公証役場の公証人に依頼して、「尊厳死宣言公正証書」を作成することもできます。

遺言書の中に尊厳死宣言について書くことを考える人もいますが、基本的に遺言は遺言者が死亡することによって開示されるものなので、避けておいた方がよいでしょう。

では、このような「尊厳死宣言」には効力はあるのでしょうか。

現在の日本では尊厳死について法制化されていませんので、尊厳死宣言があったとしても、医師に対して延命措置を禁止する効力はありません。

しかし、実際のところ、尊厳死宣言を医師に対して提示した場合、そのほとんどが本人の意思を受け入れてもらっているようです。

このように、日本の医療の現場においても、本人の意思の基づく尊厳死が尊重されている傾向にあるのが現状です。

尊厳死宣言書の書き方

では、尊厳死を望む意思を明確にするための尊厳死宣言書は、どのように書いたらよいでしょうか。

尊厳死宣言書の形式や記載については特に決まりはありませんが、以下の内容を書いておくとよいでしょう。

・延命措置を拒否し、尊厳死を希望すること。

・尊厳死を容認してくれた医療関係者が民事上刑事上の責任を負わないこと。

・本人が健全な状態であるときに宣言書を作成したこと。

・本人が撤回もしくは破棄しない限り効力があること。

参考までに、尊厳死宣言書の一例を掲載しておきます。

このように作成した尊厳死宣言書は、事前に家族などの近親者に預けておいて、その必要が生じたときに担当医師などに提出してもらえるようにしておくとよいでしょう。

おわりに

いかがだったでしょうか。

尊厳死については、現在も様々な議論があることについては先に述べたとおりです。

尊厳死について否定的な意見もありますが、病院で延命措置を受けて死を先延ばしにされるよりも、人間としての尊厳を保ったまま自然な死を受け入れる方がよいというのは、終活という観点から見ると素晴らしい考え方だと思います。

誰もが、自分の人生の最期は自分らしい最期を迎えたいと思うものです。

尊厳死というものも、終活の一つの選択肢として考える余地はあるのではないでしょうか。

今回の記事が、皆さんの終活プランの参考になれば幸いです。