自筆証書遺言のメリット・デメリット

「自筆証書遺言」とは、その名のとおり、遺言者が遺言本文・日付を自書し、署名・押印することによって作成します(ただし、財産目録を添付する場合は、財産目録については手書きでなくてもかまいません。)。遺言本文をワープロで作成したり、日付を特定しない形で記載(「令和元年5月吉日」など)したりすると、遺言の要件を満たしていないとして無効なものとなってしまうので注意が必要です。

自筆証書遺言のメリット

  • 遺言の内容の秘密が保てる
  • 手軽に作成することができる
  • 費用をかけずに作成できる

メリット1:遺言の内容の秘密を保つことができる

自筆証書遺言は、自分が手書きで作成するだけなので、遺言者一人で完結します。

遺言の内容を第三者に見られることがないので、どうしても「遺言の内容を誰にも知られたくない」場合には、この方法がよいでしょう。

メリット2:手軽に作成することができる

自筆証書遺言は、紙とペンがあればいつでもどこでも作成することができます。

簡単な内容であれば、「遺言を作ろう!」と思い立ったらすぐに作ることができるので、手軽さで言えば一番の方法です。

メリット3:費用をかけずに作成できる

自筆証書遺言は、自分が手書きで作成するだけの遺言なので、手続費用がほとんどかかりません。

極力コストをかけたくない方には、この方法が最適となります。

自筆証書遺言のデメリット

  • 遺言の内容や形式に不備がある恐れがある
  • 発見されない恐れがある
  • 変造される恐れがある

デメリット1:遺言の内容や形式に不備がある恐れがある

自筆証書遺言は、自分が手書きで作成する遺言であるため、公証人や法律の専門家が関与していない場合、その遺言の内容や形式に不備がある可能性があります。そのような不備がある遺言の場合には、遺言者が亡くなった後に遺産の相続手続をする際にその遺言を使って手続ができない恐れがあります。

デメリット2:発見されない恐れがある

自筆証書遺言は、作成した後に誰かに遺言がある事を伝えない限り、誰にもその存在を知られません。

また、遺言の保管場所も分かりやすいところにおいておかないと、自分が亡くなった後に見つからない場合もあります。

そのため、せっかく遺言を作成しても遺族の方々に発見してもらえない場合も考えられます。

デメリット3:変造される恐れがある

自筆証書遺言は、手続の手軽さというメリットの反面で、変造・偽造しやすいというデメリットがあります。

ご家族の間で遺産相続の争いが起こる可能性がある場合や、そういったいざこざが起きる心配を残したくない場合には、安全面で不安の残る自筆証書遺言は避けた方が良いかもしれません。

メリット・デメリットを理解した上で遺言を作ろう

このとおり、自筆証書遺言には一長一短があり、どのような場合にもお勧めできるわけではありません。

「とりあえず試しに遺言を作ってみよう」というような場合には、時間もコストもかからない自筆証書遺言が一番良い方法かもしれません。

「確実にきちんとした遺言を残したい」という場合には、自筆証書遺言よりも良い方法(公正証書遺言)があります。

遺言を作成する人のニーズによって、最適な方法が変わりますので、遺言の作成を検討される場合には、それぞれの遺言のメリット・デメリットをじっくり検討した上で作成することをお勧めします。