公証人におまかせして安心確実な遺言書を作ろう!公正証書遺言の作り方

公証役場の公証人に作成してもらう遺言が公正証書遺言です。

公証人という専門家が作成するので、不備や誤りのない適正な遺言書ができあがります。

遺言書を作成するにあたって「安心」や「確実」を求める方にとっては、公正証書遺言は一番の選択肢といえます。

今回は、このような公正証書遺言の作り方や手続きの流れについて解説します。

この記事の要点

  • 公正証書遺言は、公証役場の公証人が作成する遺言で、原本は公証役場で保管される。
  • 公正証書遺言は、「証人2人以上の立会い」「遺言の趣旨を公証人に口授」「公証人による筆記・読み聞かせ・閲覧」「遺言者及び証人の署名押印」「公証人の付記・署名押印」が要件となっている。
  • 公正証書遺言の手数料は、相続する財産の価額に応じて算出される。

公正証書遺言とはどのような遺言なのか

公正証書遺言は、公証人が法律で定められた方式に従って作成する遺言書です。

法律で定められた方式として、以下の5点が要件となっています。

・証人2人以上の立会いがあること

・遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授(口頭で伝えること)すること

・公証人が遺言者の口述を筆記し、これを遺言者と証人に読み聞かせ、又は閲覧させること

・遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名押印すること

・公証人がこれは法律の方式に従って作成したものであることを付記して、署名押印すること

作成された遺言書は、公証役場で保管されるので、紛失や改ざんの恐れはありません。保管期間は、公証役場によって異なる場合もありますが、だいたい遺言者が120歳になるまで保管するところが多いようです。

公正証書遺言の手続の流れ

公正証書遺言を作成する場合のおおまかな手続の流れは、以下のとおりです。

公証人への相談・打ち合わせ・依頼
公正証書遺言を作成すると決めたら、まずはお近くの公証役場の公証人と相談・打ち合わせをしましょう。
自分で公証役場に赴いたり打ち合せをすることが難しい場合には、弁護士や司法書士などの士業に依頼して代わりにやってもらうことも可能です。
必要書類の提出
公正証書遺言を作成するにあたっては、いくつかの必要書類があります。
一般的には、以下のような書類が必要になります。詳しくは、公証人との打ち合わせの際に確認するとよいでしょう。
・遺言者の印鑑証明書(発行後3か月以内のもの)
・遺言者と相続人との続柄が分かる戸籍謄本
・相続人以外の者に財産を遺贈する場合、その者の住民票
・相続財産に不動産がある場合、登記事項証明書及び固定資産評価証明書
立会証人の確保
公正証書遺言には、証人2人以上の立会いが必要となります。
立会証人は、遺言者が準備することができます。
ただし、以下に該当する人は証人になることはできません。
・未成年者
・推定相続人又は遺贈を受ける者
・推定相続人又は遺贈を受ける者の配偶者・直系血族
もし、遺言者の方で証人を確保できない場合は、公証役場にその旨を伝えれば、公証役場において証人を用意してくれます。
遺言書の文案の作成・修正
公証人が、打合せの内容や提出書類に基づいて遺言書の文案を作成します。
遺言者はその内容を確認し、修正してほしい点等があれば指摘し、公証人はその指摘に基づいて遺言書の文案を修正をしていきます。
公正証書作成日時の打ち合わせ
遺言書の文案が完成したら、実際に公正証書遺言を作成する日時を決めます。
基本的に、当事者全員が公証役場に集まって作成することが多いですが、遺言者の事情で公証役場に赴くことができない場合は、公証人が出張して遺言者の自宅や病院、施設などで作成することもあります。
公正証書遺言の作成
作成日当日に、遺言者・公証人・立会証人2名が一堂に会して、公正証書遺言を作成します。
まず、遺言者が公証人と証人の前で遺言の内容を口頭で伝えます。
公証人は、遺言者の判断能力の有無や遺言の内容が遺言者の真意に基づくものか確認した上で、公正証書遺言の原本を遺言者と証人に読み聞かせ、又は閲覧させます。
遺言者と証人は、遺言の内容に間違いがないことを確認した上で、公正証書遺言の原本に署名押印をします。
最後に、公証人が公正証書遺言の原本に署名と職印を押印をして、公正証書遺言が完成します。
作成された公正証書遺言は、原本はそのまま公証役場で保管され、遺言者には正本と謄本が交付されます。

公正証書遺言の手数料

公正証書遺言の作成手数料は、作成日当日に公証人に対して支払います。

公正証書遺言の手数料は、財産を相続する人や遺贈を受ける人ごとに財産の価額を算出し、それを以下の表にあてはめることによって出た手数料額を合算します。

目的財産の価額手数料の額
100万円以下5,000円
100万円を超え200万円以下7,000円
200万円を超え500万円以下11,000円
500万円を超え1,000万円以下17,000円
1,000万円を超え3,000万円以下23,000円
3,000万円を超え5,000万円以下29,000円
5,000万円を超え1億円以下43,000円
1億円を超え3億円以下43,000円に超過額5,000万円までごとに13,000円を加算
3億円を超え10億円以下95,000円に超過額5,000万円までごとに11,000円を加算
10億円を超える場合249,000円に超過額5,000万円までごとに8,000円を加算

さらに、全体の財産が1億円以下の場合は、「遺言加算」として上記で算出した手数料額に11,000円加算されます。

その他、遺言書の枚数により手数料が加算されたり、公証人が出張する場合にも手数料が加算されます。

おわりに

今回は、公正証書遺言とはどのような遺言なのか、その要件や手続きの流れ、費用について説明しました。

手続の流れを見ていただければ分かるとおり、公正証書遺言は、自筆証書遺言とは違って、その日のうちに作れるような手軽さはありません。

また、ほぼ無料で作れる自筆証書遺言に対し、公正証書遺言はいくらかの手数料がかかります。

その一方で、遺言書作成に精通した公証人が作成するので、確実な遺言書を作成することができるという安心感があります。また、遺言書原本が公証役場に保管されることから、遺言書が無くなってしまうという心配もありません。

このように、「間違いのない遺言を確実にのこしておきたい」という方にとっては、公正証書遺言は最適な遺言といえます。

公正証書遺言を検討されておられる方は、ぜひ今回の記事を参考にしてみてください。