法務局から「長期間にわたり相続登記等がされていないことの通知」が届いたときの対応について

「いきなり法務局から手紙が届いた!どうしたらいいの?」

最近、このような相談に来られる方が増えています。

法務局から届いた書面のタイトルは、「長期間にわたり相続登記等がされていないことの通知(お知らせ)」。

何の前触れもなく送られてくるので、受け取ってびっくりされる方も多いのかもしれません。

今回は、この法務局から届く通知書の内容と、受け取ったときの対応について解説します。

この記事のポイント

  • 法務局からの「長期間にわたり相続登記等がされていないことの通知(お知らせ)」は、土地の所有権登記名義人が死亡してから30年を超えて相続登記がされていない場合に、その法定相続人に対して相続登記を促すことを目的とする文書である。
  • この通知書は、相続登記を促すお知らせでしかないので、放置しても罰則等は生じない。
  • ただし、令和6年4月1日に相続登記が義務化されることが決まっているので、通知書が届いたら相続登記など何らかの手続きを行うことが望ましい。

法務局からの通知書、これはいったい何?

法務局から送られてくる「長期間にわたり相続登記等がされていないことの通知」という書面はいったい何なのでしょうか。

これは、土地の所有権の登記名義人の死亡から長期間(30年超)相続登記がなされていない場合に、その法定相続人に対して相続登記がされていないことを知らせるとともに、相続登記を促す趣旨の文書です。

この通知書は、あくまで相続登記を促すものであり、強制力はありません。

そのため、通知書が届いても、それを放置したからといって何らかの罰則等があるわけではありません。

ですから、法務局からこのような通知書が届いたからといって過度に驚いたり、警戒したりする必要はありませんので、安心してください。

今になってなぜ通知書が送られてきたの?

では、最近になってなぜこのような書面が届くようになったのでしょうか?

昨今、相続登記が放置されているために所有者が分からない土地が増え続けています。いわゆる「所有者不明土地問題」というものです。

所有者が分からない土地があると、まちづくりのために必要な公共事業が進まなくなるといったように、社会全体に悪影響を及ぼすことになります。

このような状況を解消するために、「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」という法律が公布・施行されました。

この法律に基づいて、全国の法務局において一定の要件に当てはまる土地について調査が実施され、30年を超えて相続登記がされていないと判明した土地について以下のような手続きがなされるようになりました。

・土地の登記簿に「長期相続登記等未了土地」である旨の登記がなされる。

・土地の所有権の登記名義人の法定相続人に対して通知を行い、相続登記を促す。

このように、深刻化しつつある所有者不明土地問題が背景となって、今回のように法務局から相続登記を促す通知書が送られるようになったといえます。

なぜ自分に届いたのか?

上記のとおり、法務局の調査の結果、「長期相続登記等未了土地」と認められた土地の所有者の法定相続人に対して相続登記を促す通知がなされます。

ただ、実際に通知書が送られるのは法定相続人のうちの1名だけです。

法定相続人のうち誰に送付されるのかは、当該土地の固定資産税の納税者であるとか、当該土地に実際に住んでいる相続人であるとか、当該土地の近くに住んでいる人であるなどといった一定の基準により決まります。

つまり、通知書が届いたということは、その人が法定相続人の中で一番その土地に関わりが深い人であるといえることになります。

結局どうすればよい?

さて、実際に法務局から通知書が届いた場合、どのような対応をしたらよいでしょうか。

考えうる対応としては、以下のようなものが挙げられます。

1.相続登記をする

通知書が届いたのをきっかけに、相続登記をするという対応が一番理想的でしょう。

令和6年4月1日に相続登記は義務化されます。いつかは登記をしなければならないので、さらなる相続が発生して権利関係が複雑になる前に、早めにした方がよいでしょう。

なお、所有権登記名義人と自分の関係や他の法定相続人について知りたい場合は、法務局において「法定相続人情報の閲覧」を請求することにより、相続関係を確認することができます。

すでに法務局で相続関係の調査をしてくれていることになるので、一から相続登記をするよりも調査の手間を省くことができるわけです。

2.相続放棄をする

通知書が届いて、「初めてその土地の存在を知った」あるいは「自分に相続権があることを知った」という方も多いかもしれません。

もともと自分が与り知らなかった土地ですから、「関わりたくない」と思っても不思議ではありません。

そのような場合には、家庭裁判所に相続放棄の申述を行うことによって、その土地の相続について無関係になるという方法もあるでしょう。

3.放っておく

この通知書自体は、あくまで相続登記を促す趣旨の「お知らせ」でしかないので、これを放置しても問題ありません。

これまで相続登記を放置してきた土地に、今すぐ労力や費用をかけて手続きをしたくない、というのも一つの考え方でしょう。

ただし、相続登記は義務化されることが決まっており、今回手続をしなかったとしても令和6年4月1日から3年以内に手続をしなければならなくなります。

結局、この選択は問題の先送りでしかないということになります。

まとめ

相続登記が放置されてきたことによる「所有者不明土地問題」を解消するため、国において様々な施策が講じられています。

今回ご紹介した法務局による通知書も、その一環といえるでしょう。

いずれにしても、相続登記の義務化が決まっている以上、手続を先送りすることはデメリット以外ありません。

特に、今回の法務局からの通知書が届いているようなケースは、所有者が亡くなってから30年超もの期間相続登記を放置していたことになりますから、すでに権利関係が複雑になっている可能性が高いです。

このような場合には、これ以上権利関係が複雑になることを避けるためにも、相続登記などの手続を早めに行うことをお勧めします。