未支給年金は相続財産?~相続と年金について(1)~
相続が発生した場合、年金についても色々と手続をする必要があります。
意外と、不動産や預貯金などの相続財産の手続ばかりが気になって、年金の手続を知らずに忘れていた、という方も多いです。
今回から、数回にわたって相続にまつわる年金の話について取り上げていきたいと思います。
第1回は、未支給年金とその手続き、相続との関係について解説していきます。
この記事のポイント
- 未支給年金は、年金受給者が亡くなった時点で支給されていない年金のことをいう。
- 未支給年金は、亡くなった年金受給者と生計を同じくしていた(1)配偶者(2)子(3)父母(4)孫(5)祖父母(6)兄弟姉妹(7)それ以外の3親等内の親族の順で請求することができる。
- 未支給年金の請求には、5年の時効がある。
- 未支給年金は、相続財産とはみなされず、請求権のある遺族の固有の財産とみなされる。
未支給年金とは
年金は、偶数月に支給され、それぞれの月にその前月までの2カ月分の年金が支給されます。
たとえば、4月には、2月・3月分の年金が支給されることになります。
そして、年金は、受給者が亡くなった月の分まで支給されます。
仮に年金受給者が7月に亡くなった場合は、7月分までの年金が支給されることになります。
しかし、6月分・7月分の年金は、8月に支給される予定だったので、この受給者にはまだ受け取っていない年金が残っていることになります。
このように、受給者が亡くなった時点で支給されていない年金のことを「未支給年金」といいます。
この未支給年金は、亡くなった受給者と生計を同じくしていた一定の遺族が請求することができます。
未支給年金の手続
では、実際に未支給年金を請求するには、どのような手続をする必要があるでしょうか。
年金受給者が亡くなった場合、まず「受給権者死亡届」を年金事務所または年金相談センターに提出する必要があります。
「受給権者死亡届」の提出をする際には、死亡の事実を明らかにできる書類(戸籍、死亡診断書のコピー等)を添付します。
その後、未支給年金を請求することのできる遺族が「未支給年金・未支払給付金請求書」を提出することで、未支給年金を請求することができます。
未支給年金を請求できるのは、亡くなった年金受給者と生計を同じくしていた以下の遺族です。未支給年金を受け取ることのできる順位も以下のとおりとなります。
未支給年金を請求できる遺族と順位
- 配偶者
- 子
- 父母
- 孫
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 上記以外の3親等内の親族
未支給年金の請求書には、以下の添付書類が必要になります。
未支給年金請求の添付書類
- 亡くなった人の年金証書
- 亡くなった人と請求する人続柄が確認できる書類(戸籍謄本・法定相続情報一覧図の写し等)
- 亡くなった人と請求する人が生計を同じくしていたことが分かる書類(亡くなった人の住民票除票・請求者の世帯全員の住民票等)
- 受け取りを希望する金融機関の通帳
なお、未支給年金の請求には時効があり、年金受給権者の年金支払日の翌月の初日から5年以内に請求する必要がありますのでご注意ください。
未支給年金は相続財産?
ここで気になるのが、「亡くなった人の未支給年金は、相続財産に含まれるのか?」ということです。
もし相続財産に含まれるのなら、相続税の計算にも関係するので、気になるところですね。
結論からいうと、未支給年金は、相続財産とはみなされません。
未支給年金は、亡くなった受給権者と生計を同じくしていた請求権のある遺族の財産とみなされます。
そのため、相続税の対象となることもありません。
遺族が支給を受けた未支給年金は、受け取った遺族の一時所得となります。
このように未支給年金は相続財産には当てはまらないため、仮に相続放棄をしていたとしても未支給年金を受け取ることができます。
まとめ
今回は、未支給年金について解説しました。
未支給年金の請求は、意外と手続を知らない方や忘れている方が多いようです。
亡くなった人が受け取るべきだった年金ですから、忘れずに手続をして受け取るようにしたいですね。
次回は、遺族年金について解説したいと思います。