相続人がいなくなったら遺産はどうなるの?相続財産管理人について
亡くなった人の財産は、相続人が承継します。
ところが、亡くなった人の家族状況によっては、相続人が一人もいない場合もあります。
そのような場合には、亡くなった人の財産は、誰も相続する人がいないままの状態になってしまいます。
今回は、このように相続人が一人もいない場合には亡くなった人の財産はどうなるのかについて解説します。
この記事のポイント
- 相続人が一人もいない「相続人不存在」のとき、相続財産は「相続財産法人」となる。
- 「相続財産法人」の財産を管理する「相続財産管理人」は、利害関係人や検察官の請求によって家庭裁判所が選任する。
- 「相続財産管理人」は、相続財産を管理・清算し、相続人や相続債権者・受遺者、特別縁故者に財産を配分し、最終的に残った残余財産については国庫に帰属させる。
相続人の不存在
戸籍上相続人となるべき人がいない場合や相続人が全員相続放棄をした場合など、相続人が一人もいなくなった状態を「相続人の不存在」といいます。
「相続人の不存在」という状態になると、亡くなった人の財産(いわゆる相続財産)がある場合、その財産を承継する人がいないことになるので、相続財産についてどのような扱いになるのかが問題になります。
このような場合について、民法では、「相続人の存在が明らかではない場合には、相続財産は法人とする」と規定されています。この法人のことを「相続財産法人」といいます。
相続財産法人と相続財産管理人
相続人がいない場合の相続財産は法人になりますが、実際にはそれを管理する人が必要になります。
そのため、相続人のいない相続財産について何らかの手続きや処理をしたい場合には、家庭裁判所において「相続財産管理人」を選任してもらう必要があります。
家庭裁判所に相続財産管理人の選任を請求できるのは、利害関係人または検察官です。
利害関係人の例としては、亡くなった人に対してお金を貸していた債権者や、亡くなった人の所有する建物の土地の地主などが挙げられます。
相続財産管理人は、その名のとおり相続財産の管理を行い、弁済すべき相手方がいる場合には弁済を行い、場合によっては財産を処分・換価し、最終的に清算を行います。
相続財産管理人選任後の手続の流れ
家庭裁判所において相続財産管理人が選任されてからの手続の流れは、以下のようになります。
- 家庭裁判所による相続財産管理人の選任
- 利害関係人(相続債権者・特定受遺者・相続人の債権者・特別縁故者など)または検察官の請求により、家庭裁判所が相続財産管理人を選任します。
相続財産管理人が選任されると、その旨の公告がなされます。
この公告の後2カ月以内に相続人が見つからない場合は、相続財産管理人が相続財産の清算手続きに入ることになります。
- 相続債権者及び受遺者に対する公告
- 相続財産管理人は、相続債権者及び受遺者に対して、2カ月以上の期間を定めて、もしこれらの者がいる場合には期間内に申出をすることを催告する旨の公告を行います。
期間内に相続債権者や受遺者が申出を行った場合は、これらの者に対して弁済を行うことになります。
- 家庭裁判所による相続人捜索の公告
- 上記の公告後においても、まだ相続人の存在が明らかではない場合は、家庭裁判所は6カ月以上の期間を定めて、相続人がいるならば権利を主張するようにさらに公告します。
この公告期間が満了すると、「相続人」及び「相続財産管理人に知れなかった相続債権者及び受遺者」は、以後その権利を主張することができなくなります。
- 特別縁故者への財産分与
- 以上の手続を経た上で、なお残余財産がある場合は、3か月以内に特別縁故者からの請求により、家庭裁判所はその財産の全部または一部をその者に与えることができます。
特別縁故者とは、亡くなった人と特別親しい関係にあった人のことで、生前に被相続人と生計を同じくしていた人や被相続人の療養看護に努めていた人などが挙げられます。内縁の配偶者などもこれに当てはまります。
- 残余財産の国庫への帰属
- 特別縁故者への財産分与を経てもなお財産がある場合は、その相続財産は最終的に国庫に帰属することになります。
これをもって相続財産法人は消滅することになり、相続財産管理人の職務は終了します。
まとめ
今回は、相続人がいない場合の相続財産の取扱いについて解説しました。
相続財産管理人が選任されることにより、相続財産は相続人→相続債権者・受遺者→特別縁故者の順番で配分されることになり、最終的には国庫に帰属することになります。
相続財産管理人の選任は、被相続人に対する債権者が相続財産から債権を回収するために請求するケースが特に多いですね。
最近では、相続人の方が全員相続放棄をしてしまって、管理する人がいなくなって放置されている不動産の取扱いに困っているケースが増えています。
このような場合にも、今回ご紹介した相続財産管理人の選任によって、何らかの解決が得られる可能性があります。
今回の記事が、このような事案でお悩みの方の助けになることができれば幸いです。