司法書士が伝えたい「相続登記を早めにしたほうがよい5つの理由」

みなさん、相続登記はきちんとしていますか?

自分の家や土地の名義が、亡くなった人のままになってはいませんか?

「相続登記って、別にしなくてもいいんでしょ」

「期限がないんだから、そのうち必要になったときにしたらいい」

そんなふうに思っている方が多いんじゃないでしょうか。

確かに、今の法律では、相続登記をする義務はありませんし、ほうっておいてもペナルティがあるわけではありません。

しかし、長年相続登記に携わってきた司法書士の立場から言わせていただくと、「相続登記はまちがいなく早めにしておいた方がよい」のです。

というのは、相続登記をほうっておくことには様々なリスクがあり、あとで相続登記をする必要に迫られたときに、「早めに手続をしておいた方がよかった」と後悔することが多いからです。

私も、司法書士として、さまざまな方の相続登記に関わらせていただきましたが、相続登記を長年放置していたために、いらぬ手間や費用がかかったりするケースや、相続登記自体を諦めざるをえなくなったケースも見てきました。

「相続登記を早めにしておけば、こんなに苦労することもなかった」

「相続登記を早めにしておけば、こんなに費用がかからなくて済んだのに」

みなさんがこのような目に遭わないためにも、今回は「相続登記を早めにした方がよい理由」について説明していきます。

相続登記を早めにするべき5つの理由

  • 相続手続に関わる人の数が増えてしまう。
  • 相続人が高齢になり、手続が難しくなる。
  • 相続人同士の関係が変化してしまう。
  • 手続に必要な書類が増えたり、取得が難しくなる。
  • 相続人の債務により、差し押さえを受ける可能性がある。

相続手続に関わる人の数が増える

相続手続は、基本的に被相続人の相続権を持っている相続人で行います。

しかし、時間の経過によって、相続人であった人が亡くなると、その相続権は相続人であった人の相続人に移ります。

このように、相続登記を先延ばしにすることによって、相続手続に関わる人の数がどんどん増えていくことになります。

遺産分割協議をするような場合は、一人でも協議に反対する人がいれば成立しません。

相続手続に関わる人が増えれば増えるほど、円満に協議が成立する可能性が低くなってしまいます。

また、当初相続人であった人が亡くなって次の世代の相続人が手続をする場合、親族同士の関係が薄れてしまっていることも考えられます。

場合によっては、会ったこともない親族と相続について協議や手続きをすることになるでしょう。

そうなると、スムーズに話し合いや手続きをすることが困難になり、時間や費用がかかることはもちろん、精神的にも負担がかかることになってしまいます。

相続人が高齢になり、手続が難しくなる

相続登記を先延ばしにすると、相続人はどんどん高齢になっていきます。

相続人が高齢になることによって、一番心配されるのが「認知症」です。

認知症などによって日常の生活に支障をきたすようになると、当然のことながら相続に関する手続きもできなくなります。

このような場合、相続人本人では手続ができないので、「成年後見人」に代わりに手続をしてもらう必要があります。

成年後見人は、裁判所に申し立てをして選任してもらう必要があり、時間も費用もかかってしまいます。

また、成年後見人は、本人の財産や権利を守る義務がありますので、よほどの事情がない限りは相続権の放棄などはできません。

つまり、成年後見人が関わることになると、相続人同士の話し合いで自由に財産を分割するということは難しくなってしまいます。

時間が経過することにより、相続人同士の関係が変わる

当初は親族同士の関係も良好で、遺産の分割についても問題なく話し合いができていたとしても、時間の経過によって親族間の関係が悪化すれば、事情が変わってきます。

当初は遺産の分割について話し合いがまとまっていたとしても、相続登記をしておかなかったために、親族同士の関係が悪化してから手続きをしようと思っても協力してもらえなくなった、ということもあります。

また、時間の経過により、相続人の誰かが音信不通や行方不明になってしまうことも考えられます。

このような場合、行方不明の相続人の捜索や、場合によっては裁判所での手続をする羽目になってしまい、時間や費用が余計にかかってしまいます。

手続に必要な書類の量が増えたり、取得が難しくなる

時間の経過によって、相続人が増えたり、相続人の事情が変化すると、相続登記に必要な書類が増えることになります。

必要な書類が増えるということは、それだけ書類の作成にかかる時間や書類を取得する費用が増えてしまうことになってしまいます。

また、戸籍などについては、役所の保存期間が決まっています。

保存期間が経過すると、廃棄されてしまい、取得ができなくなってしまいます。

そうなってしまうと、当初は簡単に手続きができたものが、必要な書類が増えたりして手続きが難しくなってしまう場合があります。

相続人の債務により、差し押さえを受ける

あまりないかもしれませんが、相続人の誰かが債務を負っていて、返済が滞っていた場合、相続財産である不動産が差し押さえされる可能性があります。

亡くなった人の名義のままの不動産は、基本的に相続人の共有財産とみなされますので、債務を負った相続人の財産でもあるわけです。

自分は大丈夫と思っていても、ほかの相続人の債務のことまでは分からないでしょう。

相続登記を放っておくことによって、いつ誰から差し押さえられるか分からないというリスクを背負うことになってしまいます。

おわりに

いかがだったでしょうか。

相続登記を放っておくことが、いかにリスクの高いことなのか分かっていただけたと思います。

せっかく相続人同士で話し合いがまとまっていたとしても、相続登記を先延ばしにしたことにより、余計な時間や費用がかかってしまう結果になるのは、絶対に避けてほしいです。

司法書士としては、相続登記ができる状態になったら、すぐにでもやってしまうことを強くお勧めします。

なお、相続登記が義務化されるということは、以前の記事でご紹介したとおりです。

国の考え方としても、「相続登記はしなければならない」という方向性になっています。

相続登記の義務化が本格的に始動する前に、まだ相続登記ができていない方は、早めに済ませておきましょう。