遺言で何が決められるの?どのように書いたらいいの?よりよい遺言書の書き方について
相続人間のトラブルを避けて相続手続を円満に進めてもらうという意味で、遺言は最適のツールです。
ただ、いざ遺言書を書こうとなると、「何から書いたらいいんだろう」とか「どういうふうに書いたらいいんだろう」と迷う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、そのような遺言を書くにあたり戸惑っている方に向けて、遺言書の書き方について説明します。
この記事の要点
- 遺言書では、「相続分の指定」「遺産分割の指定」「遺贈」「遺言執行者の指定」「祭祀財産の承継者の指定」などを決めることができる。
- 法律で定められた事項以外を遺言書に書いても、法的拘束力はない。
- 相続財産は具体的に特定できる形で記載する。
- 「相続させる」という記載を使う。
- 遺留分に配慮した相続財産の分け方を考える。
- 付言事項を活用して、遺言者の気持ちやメッセージを伝える。
遺言書で決めることができること
まず、そもそも遺言書で何を決めることができるのかを知っておきましょう。
法律上、遺言をすることができる事項は決まっており、主に以下のようなものがあります。
- 相続分の指定・指定の委託
- 遺産分割方法の指定・指定の委託・遺産分割の禁止
- 遺贈
- 遺言執行者の指定・指定の委託
- 祭祀財産の承継者の指定
- 認知
- 推定相続人の廃除・排除の取消し
- 特別受益の持戻免除
何だか難しい言葉の羅列になってしまいましたので、簡単に言うと、「自分の財産を、誰にどういう割合で相続させたいのか、具体的に何を相続(遺贈)させたいのか」を決めるのが遺言のメインテーマになります。
要は、このメインテーマを書くことができれば、遺言は完成したも同然です。
まずは、 この「自分の財産を、誰にどういう割合で相続させたいのか、具体的に何を相続(遺贈)させたいのか」 についてしっかり書くことを心がけましょう。
それ以外の事項については、気になる方や興味のある方はご自身で調べてみてください。
さて、遺言することができる事項は法律で決まっていることは分かりましたが、それでは法律で定められたこと以外を遺言に書いてしまうと、無効になってしまうのでしょうか。
この点については、法律で定められた事項以外のことを書いても、それをもって遺言が無効になることはありません。ただ単に、その内容には法的な拘束力がないというだけです。
ですから、遺言を書くにあたっては、「法律に定められたことしか書けない」と堅苦しく考えずに、自分が遺族に伝えたいことを自由に書いた方がよいでしょう。
そのほうが、残された遺族の方にも、遺言者の気持ちが伝わりますし、できるかぎり遺言者の気持ちに沿うように相続手続をしてくれることが期待できます。
ただ、あまりにも自由に書きすぎて、遺言のメインテーマが抜けてしまうと、ただのお手紙になってしまいますので、ご注意ください。
遺言書を書くときの注意点
続いて、具体的に遺言書を書くときに気をつけたい注意点について見ていきましょう。
なお、以前の記事で、自筆証書遺言の主な要件について説明していますので、今回はそれ以外で注意すべき点について解説していきます。
1.財産の書き方は具体的に
相続財産の記載をするときには、誰が見ても分かるように、具体的に特定できる形で記載した方がよいでしょう。
たとえば、預貯金の場合には、「○○銀行の預金」よりも「○○銀行○○支店の普通預金口座番号123456」という記載の方が分かりやすいですし、不動産の場合には、「○○市○○町の土地」よりも登記簿を確認して所在・地番・地目・地積まで記載する方がよいでしょう。
2.「相続させる」という記載を使う
遺言の記載の中で、「長男に財産をあげる」とか「二男に財産を譲る」といった表現を使っている方がいらっしゃいますが、このような表現は法律的には必ずしも正しい表現とはいえません。
このような場合には、「相続させる」という表現を使うと、その財産については直ちに相続人に承継されることになり、不動産の名義変更についても単独で手続きを行うことが可能となるので、遺言書を作成する際には「相続させる」という記載をする方がよいでしょう。
なお、法定相続人以外の第三者に財産を譲る場合には、「遺贈する」という記載をすることになります。
3.遺留分に配慮する
相続財産の分け方を決めるときには、遺留分について配慮することも心がけましょう。
遺留分については、以下の記事を参考にしてください。
相続人の誰かの遺留分を侵害する内容の遺言を残すと、後々に相続人同士で遺留分を巡って対立や争いが起こる可能性があります。
せっかく円満に相続手続ができるように遺言を作ったのに、結果として相続人間で問題が生じてしまっては、元も子もありません。
できるかぎり相続人の遺留分に配慮した財産の分配方法を考えた方がよいでしょう。
もちろん、遺留分を侵害される相続人が異議を唱える恐れがないとか、行方不明であるとかの事情がある場合には、あえて遺留分を無視して財産の分け方を決めても構わないでしょう。
4.付言事項を活用する
法律上、遺言をすることができる内容は決まっているということは既に説明しましたが、あえて遺言の中に法的効力のない事柄を記載することで、遺言書に遺言者の気持ちやメッセージを残すことができます。
このような遺言書に記載しても法的効力のない事項を、「付言事項」といいます。
付言事項の例としては、相続財産の分け方を決めた理由や、これまでの家族に対する感謝の気持ちや、葬儀や納骨の方法についてなど、様々なものがあります。
付言事項を書くことにより、遺言者の気持ちが相続人に伝わりやすくなり、遺言者の希望どおりに亡くなった後の手続をしてもらいやすくなったり、相続トラブルを防ぐことができる効果が期待できます。
法律で定められた事項だけ記載された遺言は、なんとなく形式ばっていて素っ気ないものです。
よりよい遺言を目指すのであれば、付言事項を活用して自分の気持ちや家族に対するメッセージも残すことを心がけましょう。
基本的な遺言書の例
では、ここまでの説明をふまえた上で、遺言書の一例を見てみることにしましょう。
おわりに
今回は、遺言書の書き方について、何をどのように書いたらよいのかについて解説しました。
これだけは書かないといけないという基本的な遺言書の要件を満たしたうえで、できる限り円満な相続になるように遺言者の気持ちやメッセージを伝える工夫をすることが、よりよい遺言の第一歩です。
今回の記事を参考にしていただいて、ぜひ皆さんも遺言書の作成にチャレンジしてみてください。