自分の財産を死後によりよく使ってもらうために。遺言を使って寄付をする方法と注意点
自分の財産を、世の中のために役立ててほしいとか、思い入れのある企業や団体の活動のために使ってほしいと考えている方も多いと思います。
そのようなときに、一つの方法として、遺言書にその旨を記載して、自分の財産を慈善団体や自治体などに遺す方法があります。
今回は、遺言で自分の財産を寄付したいと考えている方のために、その方法と注意点を解説します。
この記事の要点
- 遺言を使って寄付をするには、特定の団体に「遺贈する」と記載する。
- 確実に寄付されるように遺言執行者を指定しておく。
- 遺言で寄付をする場合は、相続人の遺留分に配慮する。
- 事前に、寄付をする団体等へ確認・打ち合わせをしておいた方がよい。
- 遺言による寄付の場合、具体的に特定の財産を遺贈する形で記載する。
遺言で寄付をする方法
1.遺言書に、特定の団体に「遺贈する」と記載する
慈善団体や自治体は、相続人ではありませんので、遺言書には、特定の団体に「遺贈する」という形で記載をします。
2.遺言執行者を指定する
自分が希望したとおりに寄付ができるようにするために、遺言執行者を指定しておきましょう。
遺言執行者は、遺言の内容を実現するために必要な一切の行為をする権利や義務があります。
そのため、信頼できる人や弁護士・司法書士などの士業者に遺言執行者になってもらえば、遺言の内容を確実に実現してもらうことが期待できます。
寄付をするときの注意点
1.相続人の遺留分に配慮する
遺言で財産を寄付する場合には、相続人の遺留分に注意する必要があります。
もしも慈善団体等への寄付によって相続人の遺留分を侵害してしまうような場合、相続人は慈善団体等へ遺留分侵害額請求をすることができます。
そのような事態になると、寄付を受けた慈善団体等は無用なトラブルに巻き込まれてしまうことになり、かえって迷惑をかけてしまう結果になるかもしれません。
快く寄付を受けてもらうために、できる限り相続人の遺留分を侵害しない遺言を作成することを心がけましょう。
なお、遺留分について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
2.寄付をする団体等へ事前に確認をしておく
いくら自分が財産を寄付したいと思っていても、相手方である団体や自治体等に受け取ってもらえなければ元も子もありません。
遺言を作成する前に、寄付を受け取ってもらえるのかどうかの確認をしておいた方がよいでしょう。
また、寄付した財産をどのように使ってほしいのかについて具体的な希望があるのであれば、事前の確認や打ち合わせはますます必要になってくるでしょう。
3.特定の財産を遺贈する形で記載する
慈善団体等に財産を寄付する遺言を作るときには、特定の財産を遺贈する形で記載をした方がよいでしょう。
たとえば、「金1,000万円を遺贈する」とか「○○銀行○○支店の預貯金を遺贈する」といった形です。
これに対し、「財産の4分の1を遺贈する」というような一定の割合で記載すると、財産を受け取る側の団体等は、具体的にどの財産を受け取るのかについて、他の相続人と遺産分割協議をする必要があります。
また、このような一定の割合を遺贈することを包括遺贈といいますが、包括遺贈を受けた者は相続人と同等の権利義務を負うことになるので、亡くなった人に借金等の負債があれば、その負債についても遺贈を受けた割合に応じて責任を負うことになります。
このように、財産のうち一定の割合を遺贈する形で記載すると、寄付を受ける団体側は色々な面倒ごとやリスクを負うことになるので、場合によっては寄付を断られる可能性もあります。
寄付を受ける団体等にいらぬ負担をかけないように、きちんと寄付をする財産を特定して記載することをお勧めします。
寄付をした場合の税金について
遺言で寄付をした場合、相続税などの税金はどうなるのでしょうか。
1.寄付した相手が個人の場合
遺言で個人に寄付をした場合、寄付を受けた個人に対して相続税が課税されます。
ただし、その個人が公益を目的とする事業(たとえば社会福祉事業や学校運営事業など)を行っている場合には、非課税となる場合があります。
2.寄付した相手が法人の場合
遺言で法人に寄付をした場合、寄付を受けた法人には相続税ではなく法人税が課税されます。
ただし、その法人が公益を目的とする事業を行う公益法人等である場合には、法人税は非課税となります。
3.法人に不動産を寄付するときは要注意
法人に不動産や株式などの現物資産を寄付した場合は、その資産を法人に譲渡したものとみなされ、被相続人側に対して譲渡所得税が課税されます。
この場合、法人に対して時価で譲渡したものとみなされるので、場合によってはかなりの金額の税金を支払わなければならないこともあります。
このように、法人に不動産等の現物資産を寄付するときは、思わぬ税金がかかってしまうことになりかねませんので、注意が必要です。
おわりに
今回は、遺言による寄付の方法と注意点について解説しました。
家族や親族のために財産を遺すだけではなく、自分の財産を社会貢献のために利用してほしいとお考えの方にとっては、遺言による寄付という方法は有効な手段であるといえます。
ただ、寄付を受ける団体や企業も、何でも無条件で受け入れてくれるわけではないので、事前に打ち合わせや確認をしておくことは大切ですね。
せっかく自分の財産を寄付するのですから、財産を押し付けるような寄付ではなく、気持ちよく受け取ってもらえるような準備や配慮を心がけましょう。
なお、日本ユニセフ協会や日本赤十字社、国境なき医師団といった皆さんがよく知っているボランティア団体でも、遺産の寄付に関するプログラムを用意しています。ご興味のある方は、ぜひご覧になってみてください。